■しっぷろメンバー紹介 (つづき)
かや (彼谷 哲志)
こんにちは。関西弁を喋らないので兵庫県在住と気づかれない四十代男性です。入職して9年目で、相談支援のお仕事をしています。事務所で面談させていただくこともあれば、自宅や病院、会社などに訪問することも多いです。いわゆる専門職の資格を持っていて、ソーシャルワーカーと自己紹介することが多いかなぁと思います。ピアスタッフの皆さんを対象にした研修にも関与させていただいています。
登山やハイキングのように自然のなかを歩くことが好きですが、なかなか時間が取れずにいます(また東北の山に登りたい♪)。ミルクティーが大好きで、精神科に入院していた期間もがんばって工夫して飲んでました。コーヒーも嗜みます。仕事やピアサポート、家族のことで頭の中で勝手に会話がはじまってしまって疲弊するのですが、今のところ瞑想が強力な道具です。
学生時代は政治や社会について哲学する学問を勉強していました。ピアサポートは1対1の関係性が根底にあると思いますが、社会の視点で眺めてみると、また新しいものが見えてくるだろうと思っています。ピアスタッフが目の前にいる人と向き合うときに、職場の人間関係、給料、福祉の制度といったものがどのように影響を及ぼすのか、というようなことに関心をもっています。
ピアスタッフになる数年前のことですが、精神障害のある仲間と自助グループをしていました。わたしにとってピアサポートを意識した原体験だったと思います。グループをはじめた動機は、たとえば、うつでつらいときや眠れないときにどうしているのか?みんなで工夫を持ち寄ると楽しいはずとシンプルに考えたからでした。結果として誰かの役に立つかもしれないとは想像しましたが、最初から誰かを助けたいという意図はなかったなぁと思い出されます。
グループではつらい経験をシェアするためには互いに話を聴くことだ、と学びました。眠れないときの対処だけをシェアしてもあまり心に響かないことを味わったのですね。眠れなくなるまでに起きたこと、そのときどんな気持ちだったのかのエピソードや気持ちを聴くことが大事でした。なるほど、それはしんどいよねぇ、あるある、という共感を伴うことで対処についてもうなずける経験をしました。事実も大事ですが、その人なりの意味がとても大事だ、ということですね。そのことを学べてよい経験でした。
自助グループを始めて数年経ってから今の職場に勤めました。家から車で20分もかからないくらいの職住近接で、職場のサービスエリアと自分の生活圏はもろにかぶっていました。そうすると何が起きるのか。自助グループの参加者には職場のサービスを利用している人も少なからずいて、自助グループでは話されていない事実を職場の記録で目にすることや職場で共有している情報とは異なる話が自助グループで出てくることがありました。相談支援をしていたので、情報に触れる機会は多くありなおさらです。架空の例ですが、とある参加者がお給料で自活してがんばっていると話していて、じつは実家からそれなりの金額の仕送りをもらっていることを職場で知りえるといったことが起こりえます。
仲間の中で自分一人だけ特別な情報を知っている気持ち悪さといったらハンパなく。参加者には自分の立場……相談支援の仕事をしているので知り得る情報が広いことをあらかじめ説明していましたが、実際に起きてしまうと居心地が悪いものでした。当事者だからこの仕事に就いたのに、どちらの立場とも言えないような居心地の悪さが自分を追い詰めていきました。そして、自助グループでは飯は食べられないので、自助グループのほうを止めました。
じつは、この居心地の悪さについて職場やグループの当事者である仲間にも相談していました。話の背景は理解されるが、共感されづらく、一人で見えないものと闘っている感じがありました。仕事そのものがつらいわけではないのに、漠然と仕事も辞めようかなぁという時期でした。
やがて、ピアスタッフについての本を読んだり、研修をしたりする立場になってみてわかったことは、私が直面した居心地の悪さは支援者と当事者の立場性からくる葛藤でした。ピアスタッフに起こりやすいとも言われています。とある研修で、ピアスタッフの人と立場性の葛藤について話をする機会がありました。自分一人ではないんだねぇ、あるあるだと実感できたことはホッとしましたし、自分の葛藤がシンプルに共感されたのもとてもありがたかったですね。多くを語らなくても共感されたことが素直にうれしかったです。
当事者としてのつながりにプラスしてピアスタッフとしてのつながりがあると仕事を続けやすいと実感しています。自助グループを止めた当時のわたしにピアスタッフとのつながりがあったらグループを止めずにすんだのになぁとふと思うことが今でもあり、感傷的な気持ちになります。もったいないことが起きないためにも、しっぷろのサイトをご活用いただけると幸いです。