【アイコン画像】ピアサポートとは、ピアスタッフとは

ピアサポートとは

​ピアスタッフとは

ピアサポートやピアスタッフについては、さまざまな場所で議論や説明がされていますが、決まった定義などはないのが実情です。たぶん⼈によってその捉え⽅は違っていて、⼈それぞれピアサポート、ピアスタッフの定義があってよいのだと私たちは考えます。

 

ですから、ここでの説明もあくまで私たちしっぷろメンバーが考えるピアサポート、ピアスタッフのあり⽅であるとお考えいただければと思います。

​2020.7.2掲載

ピアサポートとは

 

 ピアサポート(Peer support)とは、「仲間(peer)同⼠の⽀え合い(support)」のことをさします。
とくに精神保健領域でピアサポートが語られる場合、「仲間」同⼠とは精神疾患を患っていたり、それに伴う困難を経験したりしている「当事者」同⼠のことをいいます。そして「⽀え合い」とは、善意に基づくあらゆる種類の⽀え合いのことをいいます。ただしこれは、⾃分の思いを押しつけたり、⾒返りを期待したりといったものではありません。⼤事なのは、病気の⾟さがわかるが故の、⼈への優しさが根底にあることです。

 病気が原因で⾟い状況や困った⽴場に置かれたとき、同じような経験を持つ「仲間」の存在が⼤きな⽀えになることがあります。話し相⼿になってくれるだけでなく、ただただ話に⽿を傾けてくれること、横に座っていてくれること。それだけで、「⾃分はひとりじゃない」という安⼼感が⽣まれることもあります。さらにそこから、「⾃分もこの世界に居てもいい」、そして「⾃分にもまた何かできるかもしれない」という感覚を覚えた経験を持つ⼈は少なくありません。このように病気で失われた希望を新しい形で呼び覚まし、⽇常⽣活を取り戻す働きをピアサポートが担うことが度々あるといわれています。

 元来、ピアサポートは個⼈的で個別的なものが出発点ですが、ボランタリーグループや公的サービスの中で⾏われるものもあります。ピアサポートが⾏われるボランタリーグループとは、⾃助グループ、当事者会などの活動がそれにあたります。また公的サービスの形態としては、当事者が運営主体を担う当事者運営サービス、当事者と専⾨職が協働して運営する当事者パートナーシップサービス、そしてピアスタッフ、ピアサポーターなどのピア従事者があります(Solomon 2004)

 サービスとしてピアサポートを⾏うということになると、何がピアサポートにとって重要なのか、つまりその「価値」について整理しておくことが重要となります。ピアサポートの価値については、いろいろ議論があるものの、例えば次のようなものが挙げられます。

 

  • 対等で⾮診断的な⽴場にもとづいた「つながり」を⼤事にすること

  • お互いのものの⾒⽅、つまり「世界観」を尊重すること

  • 共に学び、成⻑する過程としての相互の⽀え合いを⼤事にすること

  • 望まないことを避けるのでなく、望むことに向かって進むことを、お互い⽀え合うこと

                                   (Mead 2014)

 このような「価値」に基づいたピアサポートは従来の精神保健サービスに新しい⾵を吹き込む存在として、いま⼤きな関⼼や期待が寄せられています。​

ピアスタッフとは

 

 ピアサポートの価値を基盤に対⼈支援を仕事とする⼈たちをピアスタッフやピアサポーターなどと呼びます。こうした呼び⽅に厳密な定義はないのですが、所属する機関と雇⽤契約を結び有給で働く⼈をピアスタッフ、雇⽤契約はなく登録制などで働く⼈をピアサポーターと区別する場合が多いようです。
 

 ピアスタッフと他の対⼈⽀援専⾨職を分かつものはなんでしょうか。それは専⾨性の違いにあります。医師が基盤とする専⾨性は「医学の知識」でしょうし、看護師なら「看護学の知識」、精神保健福祉⼠などの資格を持つソーシャルワーカーなら「ソーシャルワーク学の知識」がそれにあたります。対して、ピアスタッフの場合は「経験の知識」がその専⾨性だと考えられます。「⽣きた経験(lived experience)」こそが、ピアスタッフを特徴づけるものであり、強みであるといえます。
 

 ピアスタッフが担う業務は他の専⾨職と似た形となりますが、役割は違うということができそうです。利⽤者の相談に乗ったり、⽇々のプログラムを運営したり、利⽤者のお宅を訪問したりといった業務は他の専⾨職と⼀⾒変わりません。しかし、ピアスタッフの役割は、経験の知識を基盤に、利⽤者の⼈⽣の回復(リカバリー)のお⼿伝いや、権利擁護をすることにあるといえます。また、リカバリーを体現する者として他の専⾨職へ影響を与え、今までの「⽀援」の枠組みを変えていくこともその役割として挙げられます。さらには様々な困難を抱えている⼈や少数派の⼈たちの意⾒も尊重される誰もが暮らしやすい共同体へと、私たちの社会全体を変⾰していく役割も担っているとも考えられます。
 

 リカバリー志向型のサービスを提供するには、多職種が連携すること、そしてピアスタッフが介在することは⽋かせません。多職種連携においては様々な職種の⼈たちが各々の専⾨性を存分に発揮し、⼀体感をもって活躍できるようなチームワークづくりが重要です。そこではピアスタッフにも独⾃の専⾨性をもつスタッフの⼀員として、チームに貢献することが求められます。
 

 とはいえ、ピアスタッフの存在はまだ少数派で、残念ながらその良さや役割が⼗分に発揮されている状況とはいえません。そのためピアスタッフがその良さを活かせるような職場環境の整備が議論されています。しかしピアスタッフが精神保健サービスの新たな⼀職種として位置づいていくためには、ピアスタッフ側からの取り組みも必要です。
 

 ピアスタッフに求められる取り組みとして、ここでは2点あげたいと思います。1点目は、日々の実践の積み重ねです。それは、自らの原点を忘れず、ピアサポートの価値に従って利用者に寄り添う姿勢を大切にすることです。そして日々、その姿勢を点検し、熟成させていくことも大事です。2点目は専門性の構築です。そのためには、ピアスタッフ同士がお互いの「経験の知識」を持ち寄って、自分たちの原理、価値、知識、言葉を開拓し、深めあっていくことがこれから重要となってくるでしょう。

  

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<引用文献>

Mead, S. (2014) Intentional peer support.

 

Solomon, P. (2004) Peer Support / Peer Provided Services underlying Processes, Benefits, and Critical Ingredients. Psychiatric Rehabilitation Journal. 27(4), 392-401.