Q.10
ピアスタッフ、ピアサポーターとして働くなかで、これは大変だなぁと思うことについて教えて下さい。
<質問者:ピアスタッフとして働くことを希望する当事者の方>
※レスポンス下さった皆様のお名前表記は、ご本人の希望するお名前にて掲載しております。
<レスポンスしてくれた人>
お名前:はるさん
ご所属:
相談支援事業所
利用者さんに自由に来て頂ける部屋の設置、利用者さんが希望されたことに対して情報収集とお伝え用の資料作り、ピアサポートを活かした企画を考える、他の職員の業務が多そうな時はお手伝いあるか声かけ等。
業務内容:
ご地域:千葉県
(2023.04.21掲載)
本質問回答の掲載は草の根市民基金・ぐらんさんの助成により実現しています。
以下の2点に分けて回答したいと思います。
ひとつは、私の場合は「職場でピアサポーターが一人だけ」について大変に感じることがあります。働く上での悩みを溜め込まない方法を考えないと、一人で抱え込んで苦しくなる時があります。
例えば、専門職同士は視点や行う業務内容が似ている為、お互い支援方法を相談しています。それに対し、私の職場ではピアサポーターの行う業務は、内容も視点も専門職と異なっている為、案を出し合うと感覚がずれる場合もあります。違う視点から意見が出ることがピアサポーターの居る意味かもしれませんが、孤独感を感じる事も正直あります。
しかし、反対にピアサポーターが2人以上居たとしても、仮にそれが「ピアサポーターのグループだけ」で固まるきっかけになってしまう場合は、専門職との違い?の様なものがはっきりと生じやすくなる可能性があり、少数のピアサポーターが職場で浮いてしまうのでは?とも私は思います。
現時点では、総合的に見て、専門職・ピアサポーターに関わらず、助け合って進んでいると私は感じているので、「感謝・尊敬・協力し合う気持ち」を忘れない様にこれからも仕事したいと思っています。
ふたつめには、職員から利用者さんに対し、悪口や偏見、上から目線等の発言があった時に、ストレスを感じる事がありました。「易怒的になる」のが私の持続症状なので、イライラを押さえるのが大変でした。今の私の課題として「同じ内容を伝えるにも、表現方法をその場に応じて豊かにしたい」と思っています。専門職の方の意見から勉強するのは勿論、やんわりと自分の意見を伝える・厳しい印象の意見を言う時は笑顔で・逆に重要だと思った事は真剣に等、使い分けて職員とコミュニケーションを取っていきたいと思っています。
<レスポンスしてくれた人>
お名前: 川畑良二さん
精神科病院のデイケアで働くピアスタッフ
電子カルテの取り扱い
デイケア活動(歌やピアミーティング,運動レクなど)
清掃や消耗品の管理
メンバーさんのお話を聞く
…などなど
業務内容:
(2022.11.14掲載)
お立場:
ご地域:鹿児島県
私はピアスタッフになって8年目です。
ピアサポート専門員・精神保健福祉士として、以前自分自身がメンバーとして通っていたデイケアで働いています。
デイケアのスタッフミーティングでは頭が真っ白になって何も話せませんでした。
「ピアスタッフとして働く中での大変なこと」について。(私個人の経験談とご理解いただきお読みください。)
認知機能の改善と薬の調整、セルフスティグマ(※)の払拭が大変だったなと思います。認知機能では働き始めた当初は言いたい事が自分で何なのかわからない、言葉が出てこないなどの困り事がありました。
私の場合はスマートフォンの文字入力をフリック入力することがストレスなくできるようになったり、仕事を覚えていく中でパソコンのタイピングを思い出し、意識が体を思うように動かせるようになっていき、認知機能は改善されたように思います。デイケアのプログラムに私が司会進行を担当するピアミーティング(プログラム名:アビリティクラブ)があります。そこで自分達の薬の種類や効果、副作用などについて学び、意見を出し合ったり、WRAP(※)を作ったり、認定NPO法人コンボさんが発行されている「こころの元気+」の読み合わせを行なったりしています。
(※)セルフスティグマとは…
精神障害者が「精神障害を持ったことを恥、批難、絶望、罪と感じ、そして差別への恐怖などを自己の中に内在化する」状態(Corrigan 1998,山口ら 2013)
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Corrigan,P.W. (1998) The impact of stigma on severe mental illness, Cognitive and Behavioral Practice, 5, 201-222.
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山口創生,木曽陽子,米倉裕希子,岩本華子,三野善央(2013)精神障害に関するスティグマの定義と構成概念 ースティグマに関する研究の今後と課題-,社会問題研究62(通巻141), 53-66頁.
(※)WRAPとは…
Wellness Recovery Action Plan のことで日本では元気回復行動プランといいます。日本でも各地でWRAPのグループがありますがその数などは把握されていません。詳細は以下のサイトなどが参考になるかも知れません。
本質問回答の掲載は草の根市民基金・ぐらんさんの助成により実現しています。
以前は抗精神病薬を2種類の他に下剤や不安薬、睡眠薬を服用していました。主治医とのSDM(共同意思決定)を実践してきて現在の服薬は主剤1錠です。頭の中の澱みを今は感じることはありません。
セルフスティグマに関してはそれまで自分の病気は何のせいだとか、いろんなことを何かのせいにしていました。自分を受容し許すことや、他人の優しさや気配りを理解し、周囲の方々が自分に対して出来ることと出来ないことを知り、自分自身に責任を持つことを自覚しました。
思考が私たち一人ひとりの世界を作っているのだと思います。幻聴を、「〜たら、〜れば」から「そうだ」と考え、「じゃあどうしよう」と受け止めるようになりました。事実を事実として、ただ起きたこととして捉えるようにしています。
デイケアのプログラムにあるヨガをプライベートでもおこないはじめて2年が過ぎました。心を整えるために体を整える毎日を過ごしています。私にとってリカバリーとは、何があるかは分からない、しっかりと今を生きていくことだと思っています。