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Vol.09 小暮 勝さん

​(2025.8.14 掲載)

しっぷろインタビュー9人目は、神奈川県でピアスタッフとして働く小暮さんです。インタビュー内容として主に次の8点についてお聞かせくださいました。

  

①働くようになった経緯、②お仕事の内容、③やりがい、④今後やってみたいこと、⑤働く上で大事にしていること、⑥働くなかで変化してきたこと、⑦好きな言葉やモットー、⑧休日の過ごし方​。以上、是非お読みください^^

年代:60代     

地域:神奈川県

勤務先:地域生活支援センター

いて何年目か:8年目

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※小暮さんが勤務される事業所では、独自にピアサポーターとピアスタッフという役割の違いによる仕組みを作って運用されているそうです。受付業務をされる方をピアサポーターと呼び、雇用契約のない有償ボランティアとして活動しているとのこと。概ね、ピアサポーターとして受付業務を2年続けた後に、ピアスタッフとなることができる仕組みで、ピアスタッフの場合は、雇用契約を結び非常勤職員となるそうです。インタビュー本文にピアサポーターとピアスタッフの2つの言葉出てきますが、これらを踏まえてお読みいただけると、事業所の仕組みがよりわかりやすいかも知れません。

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小暮さん、今日はしっぷろのインタビューにご参加いただき、ありがとうございます!
早速ですが、小暮さんがピアスタッフとして働くようになったきっかけを教えてください。

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小暮さん

私は、20年位仕事をしている中で、いろいろあってうつ病となりました。最初はうつ病と言っても朝起きて仕事に行けていましたが、元気だった頃とは違い、まったく楽しくなくなり、苦しみながら仕事をしていました。そのうち人と話すのが億劫となり、ひざをこすりながらでないと話ができなくなりました。主治医から入院を勧められましたが、仕事を途中でなげだすのが嫌で、職場の人に迷惑をかけたくないという思いが強く、何回か入院を断りました。

   

ある時、「自分がいない方が仕事が上手くいくんだ」と思うようになり、入院することにしました。数カ月の入院を3回行い、最後の退院時、復職する気はまったくなく、主治医に相談した所、近くの地域生活支援センター(※1_以後、地活)を紹介してもらい登録しました。


地活では、最初は新聞を見たり、ソファでごろごろしていましたが、そのうちメンバー(地活の利用者さん)と話をしたり、卓球をしたり、麻雀に誘われたりしました。また、受付にピアサポーターがいて、朝お出迎えしてくれたり、ピア活動のことなどいろいろ教えてもらいました。昔は喫煙所があり、喫煙仲間と雑談をしたりしていました。メンバーの一人から、皆で歌を歌いたい!合唱やらないか?と誘われ、合唱クラブを一緒に立ち上げました。また、少し年上のピアスタッフの人から、「俺はピアスタッフという働き方が合っている。いまから就職することは考えられない。お前は復職できるのならそうした方が良い」と言われ、少しずつ復職を考えるようになりました。

 
地活に来たときは、復職なんて考えられませんでしたが、仲間といろいろ話したりしているうちに復職する意欲がでてきました。地活で、ピアの研修やガイドヘルパー養成研修(※2)、ピア活動地域交流会等いろいろ参加したことで、ピア活動について自分なりに良さを感じていたのだと思います。
復職を考えるようになり、リワーク(※3_復職支援)後に復職しました。復職は元の職場にもどることにしました。復職したら、職場で辛そうな人や、実際うつで休職している人の支えになれないか?と考えていましたが、仕事が忙しく、組織の壁も高く結局何もピアらしいことは出来ませんでした。役職定年となり、同じ仕事を続けるのは嫌だったので、退職しました。

 
退職後通っていた地活で仲間と一緒にリカバリーしていきたいと思い、ピアサポーターとして受付業務を担当し、その後ピアスタッフとして働かせてもらう事になりました。

​(※1)…地域生活支援センター:障がいのある方が地域で安心して暮らしていくための相談・支援拠点。

(※2)…ガイドヘルパー養成研修:障がいのある人が地域で安心して外出できるよう、付き添ってサポートする支援者(ガイドヘルパー)として働くために必要な知識と技能を学ぶ研修のこと。

(※3)…リワーク:精神疾患で休職している人が職場復帰するための支援プログラムのこと。復職に向けて、心と生活のリズムを整え、再発を防ぎながら「働く力」を回復することを目的とする。

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お仕事をお休みされていた時に地活でピアサポーターに会ったのが最初の出会いなのですね。退職された後、地活のメンバーさんと一緒にリカバリーしていきたい、とピアスタッフとして働かれるようになったとのこと、素敵な出会いだったんですね。 次に、今の小暮さんがされているお仕事の内容を教えてください。

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小暮さん

今は、常勤のピアスタッフとして、働かせてもらっています。常勤という事もあり、利用者さんの担当を持たせていただき、日常の相談を受けたり、プログラムやクラブ活動をメンバーと一緒に行ったり、電話での相談対応も行っています。また、ピア事業として、退院応援ミニバスツアーの企画(※4)、ピア活動地域交流会の実行委員(※5)、見学研修会の企画(※6)、講演活動などを行っています。

(※4)退院応援ミニバスツアーの企画…病院のワーカーさんや作業療法士さんと連携し、入院している人たちに地域で暮らしているピアの話をしたり、実際に地活やグループホーム等を見てもらう

(※5)ピア活動地域交流会…川崎でピア活動を行っている事業所で実行委員会を構成し、年度末に川崎でピア活動を行っている人や、ピア活動に興味を持っている人達と共に、講演やグループワークを行いピア同士の交流や学びの場としている

(※6)見学研修会の企画…他のピア活動を行っている事業所に行ったり、来てもらったりして、自分も含めメンバーや職員の学びの機会をつくる

移動支援事業においても、私は地活のピアとしてガイドヘルパーを務め、外出ができない人の家に行って、一緒に外出する活動も行っています。また、ガイドヘルパーとして活動する中でのもやもやなどを吐き出す場として、ガイドヘルパーが集まって、月に1回ミーティングを行っています。

  
川崎市の地域移行・地域定着支援推進会議にも出席させていただき、ピア活動を知ってもらい、地域移行や定着支援で一緒にピアも仕事として入っていけるような仕組み作りを検討しています。
また、仕事ではないのですが、他のピアの活動(※7)にも幅広く参加し、自分のピアとしての学びや楽しむ場としてリフレッシュしています。

(※7)…ピア相談会、ピアミーティングSchool、当事者から始めよう、神奈川ピアまつりなど。なお、ピアミーティングschoolとは川崎市で行われている「障がい当事者のピアサポート」をテーマに語り合う場のこと。今年度は当事者研究をテーマに、対面形式で「川崎ぴあ当事者研究会」として実施。

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様々な企画に取り組まれているのですね。独自のプログラムがたくさんあって、とても魅力を感じました。小暮さんが今のお仕事をするうえでのやりがいを教えてください。

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小暮さん

ピアスタッフとして働いて良かったことはいろいろあるのですが、メンバーと一緒に自分がリカバリーしてきたことが一番だと思っています。当然ですが、メンバーもリカバリーして、ピアとして一緒に働く人が増えたのも良かったことです。本当はもっとメンバーにリカバリーを伝え、ピアをもっと増やしていきたいのですが、力不足もあり、中々厳しいと感じています。とりあえず自分が感じたピアの感覚をメンバーにも感じてもらえたらと思っています。

 
また、「自分がピアとして何ができるのだろうか?」と考えたとき、我々を知ってもらう活動が大事だと思うようになりました。地域の人たち、支援者、病院関係者、家族会など我々を知ってもらうことで、差別や偏見をなくし、長期入院している人達も地域で生活したいと思えるようになると嬉しいです。

   
少しずつ、一歩一歩進めていけたらやりがいにつながっていくと考えています。これは、自分だけでできることではなく、同じような経験をしている当事者(ピア)の人達及び、支えてくれている支援者の人達と一緒にやっていきたいと思っています。

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ピアスタッフの活動を広めていきたい、という小暮さんのお気持ち、精力的に活動されている様子がとても伝わってきました。ありがとうございます。今後、小暮さんはどのようなことをやってみたい、などありますか?

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小暮さん

ピアスタッフになってから、もっと川崎のピア活動を広げていきたいと思っていろいろ活動しているのですが、中々広がっていかない現状があります。
  

昨年から仕事とは別に「当事者からはじめよう」という企画をいろいろな人達と検討しています。これは、川崎のとある訪問看護の職員による提案で、支援者だってある意味当事者だ!支援者、当事者関係なく一緒に何かやりたい!ということで企画検討を行っています。自分としては、当事者も支援者も関係なく楽しいことがやりたいと思いつつ、地域の人や病院関係者も巻き込んで、我々当事者を知ってもらえたらと思っています。更にひきこもりなど、繋がる先がない当事者の人にも参加してもらい、一緒にリカバリーしていきたいと思い企画しています。

自分も高齢者となってしまったので、中々チャレンジするのは厳しく、若い人たちに引き継いでいくことをついつい考えてしまっています。まだ何も達成できていないのですが…。今まで通り、川崎のピア活動を広げていき、当事者が活躍できることを増やしていきたいと思っています。今後は、高齢者も地域で多様な人達と楽しく過ごせる街づくりに少しでも貢献出来たらと思ってます。
 

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当事者の方だけではなく、川崎市全体にピア活動を広げていかれているのですね。いろいろな方が楽しく過ごせる川崎市になりそうです!小暮さんが対人支援をするうえで大事にされていることを教えていただけますか?

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小暮さん

みんな一人の人間だ、一人ひとり違う個性(考え方)をもっている大切な仲間だという事を忘れずに、自分はひとりでは何もできない(自分の経験を語る事しかできない)人間だから、一緒に考えていこう!というスタンスで支援しています。
ただ、一緒に考えていこう!と言いながら自分では何もアイデアがでないので、当事者研究やWRAPなどを一緒にやりましょうと…。

  
支援者としては、とても頼りない存在だと思いますが、困った時は、他の支援者に相談しながらメンバーの事を第一に考えていくことを大切にしています。

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一緒に考えていこう!という小暮さんの姿を見たら、ついていきたくなりそうです…! これまで小暮さんがピアスタッフとして経験を重ねて、ご自分の働き方が変化してきたと感じることはありますか?もしあるとしたら、どんなことでしょうか。

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小暮さん

最初のころは、メンバーと一緒に話をしてメンバーを知り、一緒にプログラム含め作業などを進めていく事が大事だと思い、事務作業等はあまりできていませんでした。ピア事業についても先輩職員に聞きながら仕事を進めていました。利用者さんの担当を持つ事になり、事務作業も必要となりました。

 

ピア事業も自分である程度考えて提案していく必要があり、メンバーと一緒に話しながら進めることが少なくなってしまい、ピアスタッフとして、メンバー第一に考えて仕事をしていないのでは?と思う事が多くなってしまいました。もっとメンバーと一緒に、メンバーの声を拾う事を大切にしていかないといけないと思っています。
 

最近は勤務時間が増えた非常勤のピアスタッフの人とピア事業やプログラムの相談をしながら進める事ができるので助かっているのですが、もっとメンバーさんの声を聞く事を増やしていかなければと思っています。

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メンバーさんの声を聞くことを大事にされたいのですね。 そんな小暮さんの好きな言葉、モットーがありましたら、ぜひ教えて頂けますか。

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小暮さん

好きな言葉、モットーと言えるかどうかですが、「一生懸命」という言葉があります。
子供のころから何も得意なことが無い自分は、やると決めたら一生懸命やるのですが結果がついてこなくて…。でも一生懸命やったのだからと自分を守る言葉にしていました。ただ、昔から集中力が続かず、計画は立ててもその通り進まなく出来なかったことも多々あり、他の人からは一生懸命やっていないと思われていたと思います。

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一生懸命、自分がやっていても他の方からはそう思われなかったり…。難しいですね…。
フル回転の小暮さん、お休みの日はどんな風にすごしていらっしゃるのですか?

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小暮さん

今は、いつもと同じ時間に起きて、テレビや録画しているビデオを見てすごしています。

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ドラマ大好き人間なので…。映画も本当は映画館に行って観たいのですが、最近55インチのテレビを買ったので、テレビで昔の映画をみています。必要な時には買い物にいったりしています。
あとはだらだらスマホゲームとかして休みの日があっという間に終わってしまいます。

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小暮さんからだらだら、という言葉が聞かれたのがとても意外でしたが、そういった時間も確かに大切ですよね…。お忙しくお過ごしかと思いますが、ぜひお互いに息抜きもしていきましょうね。今回はとても素敵なお話をありがとうございました。これからも小暮さんのご活躍を楽しみに、そして応援していますね。

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