Vol.02 川畑 良二さん
(2023.01.07 掲載)
インタビュー、お2人目は鹿児島でピアスタッフとして働いておられる川畑さんです。インタビュー内容として主に次の4点についてお聞かせくださいました。
①働くようになった経緯、②お仕事内容、③やりがい、④自身におきた変化。 是非お読みください^^
年代:40代
地域:鹿児島県
勤務先:精神科デイケア
働いて何年目か:
ピアスタッフとして8年目
この度はインタビューにご協力くださりありがとうございます。
はじめにピアスタッフとして働くようになったきっかけや経緯について教えて頂けますか?
川畑さん
就労移行支援事業所で1年半働き、地元の郵便局に障害者雇用で採用されました。しかし、仕事が覚えられない、仕事が終わったら次の日のために休むだけの生活に息が詰まり、半年で退職しました。
デイケアに再び通うようになり、スタッフに「病院内で清掃などの仕事があったら病気のことは気にせずに働ける」と伝えていました。また、デイケアの仲間と共に病院の職員向けに自分達の体験発表を一年に一度行っていました。そうしたところ、ピアスタッフに興味を持っていた当時のデイケア室長から一本釣りの形で声をかけてもらいました。まず、働けるかどうか見るために就労移行支援を利用して院内の清掃やトイレ掃除などを行う環境整備員として2ヶ月働きました。働けると思っていただき、環境整備員とデイケアのピアスタッフを兼務して働き始めました。
その後もデイケアでのピアスタッフの勤務日数を段階的に増やしていき、半年過ぎた頃に正式にピアスタッフとしてデイケアに迎え入れられました。その1年後にピアサポート専門員研修を受講させていただき、ピアサポート専門員になりました。令和3年にはステップアップとして精神保健福祉士の資格を取りました。
そうだったんですね。経緯について教えて頂き、ありがとうございます。
そうしましたら、今のお仕事の内容について具体的にお伺いしてもよろしいですか?
川畑さん
それでは私の仕事を朝から時間を追って紹介します。
送迎バスの添乗
メールチェック
問診表を一緒に
朝の始業は8時半なので、大体8時過ぎに出勤します。月曜日と木曜日は隣町までバスに添乗してデイケアのメンバーを迎えに行くため、8時15分にはバスに乗り込みます。朝は電子カルテ上のメールをチェク、ポットの水を換えたり、申し送りの連絡帳を見たりします。毎日送迎バスに乗っています。バスのルートは2つあります。近くのバスの時は出発が8時半なので朝のスタッフミーティングに参加します。たまにバスに乗らない時は来所したメンバーの検温や手洗い、血圧測定の手伝いや診察を受けるメンバーの問診票を一緒になって書いたりします。
10時に朝の会を行います。それまではメンバーと談笑し、疾患別等診療計画書のための聞き取りを行います。10時15分から午前の活動が始まります。
私の働くデイケアではウォーキングやパターゴルフなどの運動系のプログラムと脳トレや連想ゲームなどの頭を使うプログラムに分かれるレク活動や、私が主に行うピアミーティングや個別のピアカウンセリング、私のギター伴奏でみんなが歌うプログラムやDVD鑑賞、スタッフがそれぞれ国語・算数・図工・生活・体育・音楽を担当するアカデミーの時間などがあります。
昼食はスタッフがご飯やおかずを盛り付け準備します。スタッフの昼食は12時半から1時間です。私は母に作ってもらう弁当を食べます。昼食時間以外の決まった休憩は特にありません。余裕がある時にトイレに行ったり、水分補給に家から持ってきた水を飲んだりしています。
午後の活動は13時半から15時です。男性メンバーのシャワー浴介助を行う時もあります。メンバーに声をかけられた時や気づいた時にトイレ掃除もします。メンバーが帰った後はデイケアの椅子や机などの消毒清掃とデイケアノートというメンバーに1日の感想を書いてもらうノートへ返事を書きます。消耗品の管理・発注を行い、活動準備の為に資料をコピーします。メンバーを帰りもバスに添乗して送ることもあります。終業時のスタッフミーティングではその日のことを振り返り、意見を出します。メンバーの治療の方向性について話し合いを持ちます。
お昼休憩
スタッフ
ミーティング
水分補給
メンバーさんへのお返事
17時で勤務終了です。残業は基本的にしません。その他の業務としてはPSW業務として自立支援医療費や精神障害者保健福祉手帳の更新手続きの代行を行います。以上が私の1日の勤務状況と仕事内容になります。ストレスチェックも行っていますが問題なく楽しく毎日仕事しています。
お仕事の内容について詳しく教えてくださってありがとうございます。
ピアスタッフとして働くうえでのやりがいについてはいかがでしょうか?
川畑さん
やりがいですか〜(汗)。毎月のお給料は大変ありがたいです(笑)働き始めて8年目になりますが最初はいつ辞めようかと考える毎日でした。
病院なので患者であるメンバーを介助することもあり、人の命を扱う責任の重さにどうしたらいいか戸惑う時もありました。働き始めて2年目にピアサポート専門員の研修に行かせてもらいました。そこでリカバリーという言葉を知り、先輩ピアサポーターの姿に刺激を受け、支援者としての自分と向き合い、ここまでやってきました。
ピアスタッフとして働き始めた頃はスタッフルームに入るのが怖かったこともありました。デイケアの活動室に居場所がないと感じることもありました。毎日が本当に嫌だった時もありましたが、支援者としての私をこれまで支えてくれた同僚スタッフや、突然、私だけピアスタッフになったのに温かく迎え入れてくれたデイケアメンバーへの感謝を私自身が感じることができた頃から少しずつ自分を認めることができ、こんな自分でも誰かの役に立っているのかなと思うようになりました。
今はデイケアメンバーの誰にも劣ることなく私も元気になってリカバリーしていると実感しています。元気になって働くようになったメンバーや入退院するメンバーもいますが、みんなと一緒にデイケアで過ごす時間を今はとても大切に思っています。
そうなんですね、ありがとうございます。
ピアスタッフとしての経験を重ねるなかで自分の働き方が変化してきたとかんじますか?
川畑さん
以前は私自身が経験したリカバリー(服薬調整や就労)について、私こそが回復のエビデンス(証拠)だと強く思っていたところがあり、デイケアのメンバーさんにもそれを押し付けようとしていたところがあったと思います。でも、それぞれのリカバリーがあるのだと最近は思うようになってきました。何事も決めつけるのではなく、在り方を大切に尊重して、信じていくことが大切だと思うようになってきました。
私が伝えたいことは伝えますが、ただ言うだけ。それでいいと思えるようになりました。私も含めてそれぞれが今、そういう立ち位置にいるのだな、そういうものだと思っています。私がこれまでリカバリーしてきたのは、私がそう思ってやってきたからだと考えるようになりました。誰もが100点だし、一生懸命じゃない人はいないと思います。
私の好きな山下達郎さんの歌、『レシピ』に「幸せのレシピ」と言うフレーズがあり、これは精神医療では「EBP」と言うのだと思います。幸せになるには幸せになる方法というものがあるのではないかと思います。しかし、それは一人一人が自分で見つけるものだと思います。私が幸せそうにしているのを周りで見ている人がいいなとか興味を持ってもらうことがエンパワーメントするということだと思います。自分自身を見つめてどう考え、いかに行動するのか。
リカバリーの道を歩んでいく中で同僚のスタッフやデイケアのメンバーさん、いろんな方に影響を受け、与えて、支援して、支援されていくのだろうなと思います。その時に接した感じでメンバーさんとのやり取りを丁寧に行い、支援していきたいと思います。
働くなかで、ご自身の考え方にも変化があったことがよくわかりました。聞かせて下さってありがとうございます。今回、インタビューにご協力くださって本当にありがとうございました。これからのご活躍も応援しています^^
本インタビューの掲載は草の根市民基金・ぐらんさんの助成により実現しています。