Vol.03 瀬戸 崇史さん
(2023.01.28 掲載)
インタビューの3人目は神奈川県でピアスタッフとして働いておられる瀬戸さんです。インタビュー内容として主に次の6点についてお聞かせくださいました。
①働くようになった経緯、②お仕事内容、③やりがい、④今後やってみたいこと、⑤対人支援の上で大事にしたいこと、⑥自身におきた変化。是非お読みください^^
年代:50代
地域:神奈川県
勤務先:生活支援センター
働いて何年目か:
ピアスタッフとして6年目
この度はインタビューにご協力くださりありがとうございます。
はじめにピアスタッフとして働くようになったきっかけや経緯について教えて頂けますか?
瀬戸さん
病気の症状がよくなってくる過程で、再び働きたいと思いました。何の仕事に就くかと考えたときに、もともとサービス業についていた私は「福祉の仕事もある意味サービス業だよな」と思い、さらに「福祉の仕事であれば自分の病気の経験も業務に活かせるかも」とも考えたのですね。そこで福祉の仕事に就こうと考え、いろいろ調べているうちに精神保健福祉士という福祉の専門資格があることを知った私は精神保健福祉士をとって、自分の経験も活かしながら福祉業界で働こうと考えました。
「福祉もサービス業」「資格を取ろうかな」
当時はピアスタッフという言葉も、そういった働き方があることも知らなかったので全くの自分の思い込みからのスタートでした。紆余曲折がありながらも資格は取れたのですが、就職活動をする過程では自分が統合失調症でもあることをオープンにして応募しても(もちろんそれだけが理由であったとは思いませんが)履歴書すら受け付けてくれないような状況でした。そこで病気のことをクローズにして応募し、とある社会福祉法人の非常勤の職に就くことができました。
病気のことを、クローズのまま約8年勤務
ほどなくして常勤に登用してもらうことができ、病気のことをクローズのまま約8年勤務します。なのでこの時期はピアスタッフ的に自分の病気の経験を表立って支援に活かすということはなかったですね。
そんな風に働いていく過程で、自分が当初思っていた自分の病気の経験も支援に活かす、という気持ちは次第に小さくなっていき、マインドとしては精神保健福祉士であるということの方が大きくなっていたように思います。もっと言えば自分が統合失調症である、ということをなかったことにしようとしていたようにも思います。そんな時に今の妻と出会いました。2016年のリカバリー全国フォーラムでのことです。
彼女は自分と同じく精神疾患であり精神保健福祉士として病気のことをオープンにしてそのことも支援に活かして働いている方でした。そんな彼女の姿に強い刺激を受けるのと同時に、リカバリー全国フォーラムに参加している方々の活気あるキラキラしている様子を目の当たりにして、病気であることをなかったことにしようとしていた自分のことを恥ずかしいと思うようになったのですね。そして自分も病気のことをオープンにして、そのことも活かして支援の仕事をしたいと思うようになり転職を決意、翌年から就労継続支援B型事業所で病気のことをオープンにして働き始めます。
病をオープンに&活かしたい!
オープンにして働きはじめましたが、そこではどちらかというと今までの精神保健福祉士としての経験の方が重用されるような働き方でした。そこでより自分の病気の経験も支援に活かして働きたいという思いが強くなり、知人の紹介で現在の職場に再度転職を果たし今に至ります。
はじめは病気のことをクローズにしながらのスタートだったんですね。病気をクローズにしての就職から、今に至るまでの経緯について詳しく教えて頂き、ありがとうございます。
そうしましたら、今のお仕事の内容について具体的にお伺いしてもよろしいですか?
瀬戸さん
生活支援センターでの業務は、業務全般を担っています。具体的には対面や電話での相談対応やフリースペースでの対応、プログラム運営やご自宅への訪問、病院等への同行、関係機関との会議参加、また相談支援専門員でもあるため、計画相談業務など、生活支援に関する多岐にわたるあらゆる業務を担当しています。相談業務では生活上、生じる困りごと全般、金銭のことや就労のこと、住まいのこと、ご家族関係のこと、医療のことなど様々な内容に関する相談があります。
それらの相談ごとについて私はこちらが主導するというよりまずは話を聴きそのうえで一緒に考え解決法を模索する、ということを大切にしています。またその過程では時には自分の経験も差し出すこともしています。そのせいか以前「瀬戸さんは話を聴くだけで答えを言ってくれない」、みたいに言われてしまったこともあり、少し凹みました(笑)
普段の業務のなかでは特にピアスタッフ特有の、といったものはなく、基本ほかのスタッフと同じような動きをしていますかね。その中でも「ピアスタッフ」といった面に注目した業務を依頼されることもあり、リカバリーについて、ピアスタッフについて等の普及啓発のために呼ばれて話をさせていただくことや自分の体験談を語ることも時にはあります。
私の働き方としては常勤職員のため週5日8時間勤務です。日曜・祝日と、ほか1日が休みです。
定時は早番(9:00~18:00)と遅番(11:00~20:00)があり、シフト制です。
日々の動きとしては、その日の予定にある面談や訪問をこなしつつ、それ以外の時間で電話相談を受けたり、関係機関と情報の共有や日程調整などをしたりしています。また、面談や訪問、電話相談を行った後は記録を残さなくてはならないため、事務所にいる時間はPCにて記録作成をしていることが多いですかね。
もちろんほかのスタッフが担当している利用者さんについてもある程度の対応ができるように知っておく必要があるので、事務所にいる時間に記録を読んだり、ちょっとの隙間時間でほかのスタッフと共有をしたりすることもちょくちょくあります。
電話相談
記録作成
面談
訪問
電話などいつだれがとるかわからないので、担当職員でなければわからない、ということがないように私の事業所では共有にはかなり気を使って丁寧に行っているように思います。
お仕事の内容や、日々の働きについて詳しく教えてくださってありがとうございます。
ピアスタッフとして働くうえでのやりがいについてはいかがでしょうか?
瀬戸さん
病気で働きたくても働けない期間が長かった自分にとって、まず何よりも働けている、ということが大きいですかね。働けていることで自分の所属先がある、そしてそこで自分の力が役に立てているということで自己肯定感を強く感じています。次に仕事を覚えることでレベルアップしていっている自分を感じ、さらに自己肯定感は増していきます。そのうえで仕事を認められたり、褒められたりすることでますます自己肯定感も高まっていく。このサイクルがうまく回っていくことで、どんどん元気になっていっている自分を感じ、自分のことを好きになることが出来ていっています。
仕事ができているということが自分の自信につながっているようで「自分も結構やれている」みたいに思えそのことがやりがいに繋がっています。なので、自分がかかわった方などがどんどん元気になっていったり、新しいことに取り組もうとされるようになっていったりする姿を見ると、その方もリカバリーしていっているのでしょうが、何より自分自身がリカバリーしていっているようにも感じます。そんなときにこの仕事をやっていてよかったなんて思いますね。また、自分の力も必要とされていたんだ、なんて感じることもあり、そのことも自分にとっての励みにもなっているように思います。
あとこれは支援者であるとかメンバーさんであるとか関係なく、いろんな方々と出会えるというところにもやりがいを感じていますかね。多くの方々とかかわり話をしてその人の考えに触れる、自分にはなかった発想や経験に触れ、刺激を受けることも多くあります。その時は相手が支援者であろうがメンバーさんであろうが関係なく、勉強させてもらいました、という気持ちになりますし、率直に相手に対してリスペクトの念を抱きます。
その中で思いを同じくしていけるような方々と協力して一緒に何かに取り組めたり、それが形になったりしていくのを見るとやっててよかったなと思います。そのように多くの方とつながれる、そしてつながりが広がっていく、つながりが広がって行くことで自分も元気になっていけることもこの仕事をやっていてよかったなと思うところです。そんなことからもよく言われることではありますがピアサポートっていたるところにあるんだな、なんてことを実感しています。
そうなんですね、つながりが広がっていく感じが良く伝わってきました。ありがとうございます。
今後やってみたいこと、挑戦したいことなどはありますか?
瀬戸さん
ピアスタッフとして働いている、働こうとしている多くの方とつながりたいなと思っています。そのうえでピアスタッフ同士のピアサポートグループといいますか、ピアスタッフ自身が自らの取り組みを振り返り、ほかの方々からフィードバックをもらえたりするような場が作れたらいいな、なんてことをぼんやり考えています。
そうすることによってピアスタッフのすそ野がどんどん広がって行けばいいな、なんてことを考えています。職場の中ではやはりピアスタッフって少数派なんですよね。理解ある職員さんに囲まれているとはいえ、時々彼らの言動とかに違和感を覚えることがあったとしても、中々その思いをはっきりと表明できるかと言えば難しいところがあるので、ほかの現場のピアスタッフさんはそんなことはないのかな、ということが気になります。愚痴を言い合うとかではなくてこんなときどうする、こんなことない?みたいなことを出し合い、建設的に話し合える場が欲しいな、なんてことは考えています。
そのような場、あるといいですよね。しっぷろでも取り組みたいことのひとつです。
対人の支援をするときに大事にしていることはなんですか?
瀬戸さん
基本的なこととして相手に対して敬意を払うことは大事にしています。同時に自分自身も敬意を払われてしかるべきと思っており、お互いが対等な関係から人と人とのかかわりはスタートするものだと考えています。この大前提が成り立たない方とは正直、支援関係を結ぶのは難しいかなと思ってしまいます。ケースバイケースではあると思うのですが、「支援者なんだからやってくれるよね」、「どうしたらいいですか?」みたいにこちらに主導権を握らせるようなことを言われるとちょっとそれは違うのではないかな、と私は思ってしまいます。「どうしていくか一緒に考えましょう」みたいな返答を私はすると思います。それでご本人が下した決断に対しては最大限尊重したいと思っていますし、とことん付き合いたいなとも思っています。「私も頑張る、だからあなたにもあなたなりに頑張ってほしい、そのうえで一緒にやっていこう」みたいなメッセージはいつも発信しているような気がします。
そうなんですね、大事なことですよね。お聞かせくださりありがとうございます。
ピアスタッフとしての経験を重ねるなかで自分の働き方が変化してきたとかんじますか?
瀬戸さん
自分はもともとクローズで専門職として働いていましたので、そのような働き方を続けていく中で自分の中の精神疾患であるという当事者性は徐々に小さくなっていきました。その時はメンバーさんのことを支援される人、自分たちのことを支援する人、のように見ていたところがあったように思います。
その後、自分の経験も支援に活かして働くピアスタッフとなるのですが、そのことで支援される人、支援する人、みたいな垂直の関係でとらえることは少なくなっていったのではないかなと思います。
また、当事者経験の使い方といった面から言えば、どのタイミングで自分の当事者経験を使うか、武器の使いどころみたいなものがだいぶわかるようになってきましたかね。当初はそこかしこで武器を振り回していたようにも思いまして(笑)それも、もしかしたら迷惑な話だったかもしれないな、なんてことを今にしては思います。今は何となく武器の出しどころがわかるようになってきているように思います。
働くなかで、ご自身の考え方や態度などにも変化が起きたんですね。聞かせて下さってありがとうございます。今回、インタビューにご協力くださって本当にありがとうございました。これからのご活躍も応援しています^^
本インタビューの掲載は草の根市民基金・ぐらんさんの助成により実現しています。